
今月から「鶏と卵の研究所」のホームページ(HP)をリニューアルしました。TOPページの「お知らせ」欄にもご紹介していますように、HPのデザインや機能を一新し、研究所員一同、新しい気持ちで養鶏業界に資する国内外の最新情報を興味深くかつわかりやすくご提供できるよう精進してまいります。今後とも、今まで以上のご支援・ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、この時期になると心配になってくるのは、鳥インフルエンザです。本コラムに当研究所のアドバイザー増田壽幸氏から「鳥インフルエンザは隔年で流行する?」という原稿をいただきました。HPリニューアルの初回に一部加筆し、所長コラムとしてご紹介します。みなさん、鳥インフルエンザのシーズンがもう直ぐ始まります。備えあれば憂いなし、早めに強く意識して備えましょう。
昨シーズンの鳥インフルエンザは比較的ましであった。今年の鳥インフルエンザはどうなるのか?過去6年間の家禽での発生件数の推移(下図)を見る限りでは、残念ながら、今年(2026/2027年)は流行の年と予測するしかない。その根拠は、過去6年間、西暦で偶数年シーズンは、前年の発生件数を大幅に上回っているからである。多くの養鶏関係者も、この隔年周期はご存知のはずである。
それでは、なぜ隔年周期で鳥インフルエンザの感染件数が増えるのか?よく聞かれるのが、大流行したシーズンの翌年は養鶏関係者が鶏舎のバイオセキュリテイ手順の遵守に神経質になるので、結果として感染件数が抑制されるという説である。鶏舎の管理に忙殺される関係者の気持ちは理解できるが、バイオセキュリティの強弱によるというこの説はどうも怪しい。なぜなら、感染件数の増減は家禽だけでなく、野鳥でもほぼ同じパターンが見られるからである。野鳥の感染と鶏舎のバイオセキュリテイの強弱に関係あるはずがない。何か別の理由で野鳥の感染が増えて、結果として家禽の感染も増えているように見える。
その他、隔年周期を説明する有力説としては、渡り鳥の集団免疫獲得が知られている。毎年、渡り鳥が運ぶ鳥インフルエンザウイルスは遺伝子の変異により、感染力がシーズンによって変化している。そして、感染件数の隔年周期は、野鳥の集団免疫獲得の水準に関係していると考えられている。ウイルスが大流行すると、多くの渡り鳥が抗体を持つ鳥(免疫を獲得した鳥)として生き残り、北帰行する。この場合、獲得免疫が年単位で保持され、大流行したシーズンの翌年は集団免疫レベルが高く、結果として飛来地での感染が抑制されるという説である。
この説が正しければ、諸外国でも同様に、隔年で流行するパターンが観察されるはずであるが、そうでもないようである。ヨーロッパでは、2020年より前には数年おきの大発生があったが、2020年からは夏場でも野鳥の間でウイルスが保存され、常在化し毎年のように大流行している。北米では2021年末に大流行した株(H5N1 クレード2.3.4.4b)が渡り鳥経由で侵入して以来、数年連続で高い感染水準を維持している。さらに近年では、野鳥や家禽のみならず野生の哺乳類や乳牛への感染拡大が問題となっている。東南アジアでは渡り鳥の飛来時期にかかわらず野鳥の間でウイルスが循環し、通年で局所的に発生している。
以上、近年の鳥インフルエンザの隔年流行は、我が国の特徴的な発生現象のようである。日本は島国であり、かつ渡り鳥の越冬地でもあるが、今のところ国内での常在化はなく、春にはれば渡り鳥も帰っていく。このような地理的条件が渡り鳥の集団免疫サイクルとうまくかみ合い、日本特有の鳥インフルエンザの隔年流行を特徴付けているのだと思われる。いずれにしても、今年は鳥インフルエンザ流行の年と予想される。今一度、各自が早めに強く意識して、来るべき渡り鳥の飛来に備えていただきたい。

図:鳥インフルエンザ発生件数(2020/2021年〜2025/2026年)
農水省HP https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/r7_hpai_kokunai.html
「鶏と卵の研究所」所長 八田 一