所長挨拶

鶏と卵の調査研究で養鶏業界に貢献したい

 鶏と卵は宗教や文化に関係なく 、世界中で食べられている動物性食品です。特に卵にはヒヨコが生まれるのに必要十分な栄養素が含まれ、動物細胞を作るタンパク質や脂質が豊富で、ビタミンやイネラルもバランスよく含まれ、我々の体細胞37兆個の恒常性の維持にも理想的な栄養食品です。 しかも、その生産効率は動物性食品の中でも特筆すべきで、動物性タンパク質 1g の単価比較では、およそ鶏卵が 3円、鶏肉が 5円、牛乳 6円、 豚肉 8円、 牛肉20円 と概算されています。さらに卵はいろんな食材と相性がよく、料理の種類の豊富さも動物性食品の中で一番だと思います。

 
 現在、地球の人口は83億人(2026年8月)、2050年には100億人に達する勢いで 、特にアジアとアフリカで増え続けています。世界の穀物生産量は約28億トン、その半分を世界の人口の約20% を占める先進国が消費し、その60%が飼料に使われ動物性食品に変わります。国連食糧農業機関(FAO)によると 、世界の飢餓人口は約8億人で1日に4万人が亡くなり、その70%以上が子供達です。そんな中、先進国の約21億人が太り過ぎで、約6億人が肥満だそうです。世界の食糧分配の偏りは経済格差や政治紛争、バイオエタノールと穀物相場問題、食品廃棄問題、地球温暖化や砂漠化といった環境問題にも原因があり極めて複雑です。将来、必ず押し寄せる 食糧危機に備え、国連のSDGs運動の各項目も大切な取り組みですが、さらに直接取り組むべきは 、動物性食品として飼料効率が優れる鶏卵や鶏肉の生産と消費の拡大です。特に日本の卵の生産技術や衛生管理技術および調理加工技術は世界最高レベルで、まずはこれらの技術を日本から世界へ広め、世界中の「鶏と卵」に関する技術を日本に紹介したいと思います。

 私が卵の研究を始めて、今年で47年目になります。大学卒業後、企業で18年、京都女子大学で24年間、卵の栄養・調理・健康機能を中心に、社会に役立つ研究を目指してきました。そして現在、「鶏と卵の研究所」の所長に就任して5年目、卵にはまだまだ興味深い研究課題が存在します。また、近年では鳥インフルエンザ、動物福祉、飼料の高騰化など、鶏や飼料原料の方から解決すべき研究課題も浮上してきました。 「鶏と卵の研究所」では、養鶏業界の全ての皆さんと連携しながら、鶏と卵に関わる諸問題の本質を見出し、科学的なひらめきを大切にして、問題解決に役立つ調査研究に取り組みたいと思います。

鶏と卵の研究所 所長 八田 一