NEWS

卵を産んだ鶏の写真

Newsニュース

2025.10.31
所長コラム #4 「鳥インフルは何がなんでも早期発見」

 10月22日、北海道の採卵養鶏所で本年度初の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)感染が発生しました。養鶏家の皆さんがバイオセキュリティ対策をしっかり実施し、特にこの時期には相当の注意を払われているにも関わらず、これで6年連続の発生です。今一度、鳥インフルエンザのシーズンが始まったとの認識を新たにして、バイオセキュリティの強化を図り、感染拡大のないように願いたいものです。
 近年、世界的に見ても鳥インフルエンザは野鳥や家禽のみならず乳牛や羊や猫などの哺乳類、アザラシやトドやペンギンなどの海洋生物にも感染が広がっています。特に、今年の北米やヨーロッパでは感染拡大が深刻な状況となっています。また、韓国では9月12日、台湾でも10月17日にHPAIの発生が家禽で確認されています。いずれも日本同様、例年より1ヶ月以上も早い発生確認のようで、特にこれからの感染拡大が懸念されています。
 そもそも、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)は、1996年に中国広東省の商業用ガチョウから初めて分離されました。その後、2000年代初めに東南アジアで大流行し、大量の家禽が殺処分されました。ヒトへの感染も少なからず報告され、ベトナムやタイではたくさん死者が出ました。それからヨーロッパやアフリカの家禽にも広がり、2014年にはアメリカで大発生し、数百万羽の家禽が殺処分されました。2020年ごろ、現在主流のH5N1の亜型である2.3.4.4bが出現し、野鳥や家禽への感染力が強く、渡り鳥により世界中に運ばれ(下図参照)、現在の大流行の原因となっています。
 このように、その出現から30年近く経っているHPAIウイルスですが、世界中のウイルス研究者が鋭意研究を続けているにも関わらず、渡り鳥から家禽へ移る経路がいまだに特定されていません。その感染様式は通常のインフルエンザ感染症と同様、飛沫感染や接触感染が予測されますが、渡り鳥から家禽へ直接移ることは考えにくく、何がウイルスを鶏舎まで運ぶのか?風、野鳥、野生動物、ネズミ、ハエ、ヒトなど。それらを防ぐバイオセキュリティが考えられ実践されていますが、特定はできていません。おそらく、これら全てがウイルスキャリアーであり、たくさんあり過ぎて、厳重なバイオセキュリティの壁をすり抜けてくるのだと思われます。
 そこで大切なのは「鳥インフルは何がなんでも早期発見」してウイルスの拡散防止です。我々の「鶏と卵の研究所」では、この観点から研究開発を進めています。先月の所長コラムでも紹介しましたが、今月11月8日(土)に京都女子大学で開催される日本たまご研究会において研究提言として、「斃死鶏や鶏卵数のクラウド管理と鶏病の早期発見方法」をご紹介します。今年も鳥インフルエンザの季節が始まりました。採卵養鶏データのクラウド管理技術が鶏病の早期発見につながり、鶏卵・養鶏業界で実際に実用価値ある研究として役立つことを願っています。

 

渡り鳥の飛行経路 Lycett SJ, Duchatel F, Digard P.  2019 A brief history of bird flu. Phil. Trans. R. Soc. B 374: 20180257. Figure 4一部改変  http://dx.doi.org/10.1098/rstb.2018.0257 飛行経路はおおむね南北方向に走り、シベリア、グリーンランド、アラスカを含む北部地域では重なり合う。 ベーリング海峡を越える経路もあり、これにより北米とユーラシア間でインフルエンザウイルスが時折伝播する。

「鶏と卵の研究所」所長 八田 一