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卵を産んだ鶏の写真

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2026.02.01
所長コラム #7 「立春の卵」

 2026年もあっという間に2月に入り、4日はもう立春である。立春といえば卵が立つ。卵が立つのは、「コロンブスの卵」と「立春の卵」ぐらいであるが、昔、名古屋ドームで高校生を前に「卵は立つ!」という3分間のプレゼンを行ったことがある。

      卵は立つ! https://www.youtube.com/watch?v=jaXDds7X038&t=4s

 アメリカ大陸の発見者、クリストファー・コロンブスは、卵のように丸いものが立つわけないと言う人に、卵の底をつぶして立てて見せた。そんなやり方なら誰にでもできるインチキだと言う批判に対し、「コロンブスの卵」は誰にでもできることでも、それを最初に実践した人は評価に値すると伝えている。
 さて、卵を立てる方法はコロンブスの卵だけと思っていたが、中国の古文書には「立春の日に卵が立つ」と書かれている。なんと、その再現実験が今から79年前の昭和22年の立春の日に行われ、2月6日の新聞各紙には、立春の日に卵が立ったと写真付きで紹介された(図1)。国民の多くが立春の日に卵が立つ神秘的な力を信じたが、雪の結晶の研究で有名な物理学者の中谷宇吉郎博士が、卵は誰でもいつでもどこでも立つことを、随想文「立春の卵」の中で説明した。
 卵の殻は卵殻膜に炭酸カルシウムの結晶が沈着したものである。卵殻の表面を拡大して見ると、炭酸カルシウムの鱗のようなものが重なり、また気孔という直径10~30μmの空気や水が通る孔が、卵1個あたりに約1万個も空いている。卵殻表面を拡大すると結構ザラツキがありデコボコしている。
 次に、物理学的に物体が立つ条件を考えると、物体とそれが立つ平面との接点の間に物体の重心から下ろした鉛直線が通ることが必要条件である。ここで、卵を平面に立てる場合、卵殻表面はデコボコなので平面との接点は必ず3点以上ある。それらの接点の間に卵の重心からの鉛直線を通せば卵は立つ(図2)。
 ただ、その接点の間が非常に狭く、卵を立てるのは難しいが、論理的に考えれば卵は必ず立つ。立つことを確信して、卵殻と平面が作る狭い接点間をイメージし、立つまで何度もチャレンジしバランスをとれば必ず立つ。立たないのはこんな丸いものは立たないと勝手に思い込み、立つ前にあきらめてしまうからで、要するに私たちの努力と忍耐が足らないからなのである。みなさん、あきらめずに立つまでがんばろう!

「鶏と卵の研究所」所長 八田 一