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「鶏と卵の研究所」HPのリニューアルに際し、HP担当者から強く熱望され、所長コラムを毎月1回掲載することになった。「コラムはやはり所長に書いてもらわないと」と口説かれ、不覚にも、久々に執筆宣言をやらかしてしまった。しかし、宣言した限りは、鶏と卵に関して、当HP登録者および養鶏関係者に有意義な情報を提供し、楽しく読んでもらえるコラムにしたいと思う。執筆宣言といえば、15年ほど前、京都女子大学の教員時代、鶏卵抗体(IgY)のテーマが文科省の大型研究プロジェクト「京都環境ナノクラスター」に採択され、鶏の手(羽か)も借りたいぐらい忙しい時、木香書房の月刊誌「鶏の研究」に同じように執筆宣言をした苦しい経験が蘇る。
初回の所長コラムが、奇しくも、昨年末にご逝去された木香書房の有福社長にまつわる話題になるとは、これも不思議なご縁で感慨深い。有福さんの京都好きは有名で、京都女子大の八田研究室へもよく来られた。用件は月刊誌「鶏の研究」への執筆依頼であったが、当時、クラスター研究プロジェクトが忙しく、何度来られても毎回、丁重にお断りしていた。そんな中、作戦を変えたのか、京都の先斗町や木屋町(祇園はなかったなぁ)から電話がかかる様になった。有福さんの夜の部へのお誘いである。
お互いの酒心・気心が知れると、懸案事項も解されるもので、「それでは1年間だけ」と執筆をと引き受けてしまった。お酒に酔った勢いほど怖いものはない。三顧の礼というより、三顧の酒で落とされてしまった。それから、毎月の原稿締切りに苦しみながら、なんと6年間(途中海外留学で2年お休み)で48回も「鶏の研究」に原稿を提出した。そして、2018年には木香書房と共同で、京都女子大学に申請した出版助成が採択され、48回プラス追加の原稿を加えて「エッグサイテイングな卵の研究」上下巻(写真)が刊行された。

今回、所長コラムで悩んでいた矢先、木香書房から突然の連絡が入り、今年6月末で100年続いた会社を締めますとのこと、やはりカリスマ編集者で経営者の有福さんがいないと会社の存続が難しいらしい。「つきましては八田先生のご著書の在庫がたくさんあります。廃棄するには忍びなく、お送りしましょうか」との提案であった。早々、「エッグサイテイングな卵の研究」上下巻が大量に届いた。これも今は亡き有福さんとのご縁か、そうだ所長コラムの初回は有福さんを偲びながら、私の初著書を紹介しよう。そして、ご提供いただいた在庫は今年11月8日(土)の第21回日本たまご研究会の参加者に謹呈しよう(HPの国内ニュース参照)と思った次第である。
まず、有福さんというお名前は珍しくて印象深い。お近づきになると福を分けていただけそうなお名前である。女子大生にもたいへん人気があった。研究室にお土産を持ってきてくれる方は概ね人気者だが、特に有福さんの女性に対する柔らかい雰囲気は人気であった。八田研の忘年会は毎年必ず駆けつけてくれて、2次会や3次会まで付き合っていただいた。将来、ライター志望の学生には、特別指導と就職の相談もしていただいた。毎回締め切りギリギリ提出の「鶏の研究」の原稿も、叱咤激励していただき、最後まで応援してくださった。
このように、私の初めての著書である「エッグサイテイングな卵の研究」は木香書房の有福社長とともに刊行したと言える。歴史ある木香書房が閉まり、100年続いた月刊誌「鶏の研究」が廃刊になるのはたいへん残念ではあるが、今は亡き有福さんの意思を受け継ぎ、養鶏関係者にもわかりやすく読みやすく、私の初めての著書の内容をアップデートしながら、適時紹介させていただく所存である。今月から所長コラムの連載が始まり、いつまで続くかわからないが、執筆に困った時には有福さんを思い出しながら、まずは1年間頑張ってみようと思う。
「鶏と卵の研究所」所長 八田 一